オーストラリアへ移住した日本人から見た『日本の教育制度』

こんにちは。山本アンドリュー(@chokkanteki)です。

今回は、日本を離れて海外に暮らしを移した海外移住者(在外日本人)を特集します。

よく言われることですが、一つの事象を別の視点から見てみるとこんな考え方もあったのかと驚くことがあります。特に、進学、就職、転職など自分の周りの環境が変化すると、当時は思いもつかなかったことが見えてきます。

今回は、オーストラリアに移住して6年になる「Yukippe」さんが日本を離れて見えてきた、オーストラリアと日本の教育制度についての記事になります。

元ニュージーランド在住者が日本を離れて気づいた日本の「おもてなし力」元ニュージーランド在住者が日本を離れて気づいた日本の「おもてなし力」

競争社会日本での受験戦争について

日本は競争社会だ。

高校受験、大学受験と各3年おきに受験を強いられ、それによってその後の人生が大きく左右される。例えば、日本の最高峰、東京大学合格者の2019年度ランキングのトップ10は私立高校で占められており、ほとんどの学校が中学受験からの中高一貫教育を主としている。受験層は年々若年化しており、小学校受験、中学受験も今となっては当たり前の選択肢である。

教育は親が子供に与えられるギフト

高校受験まで、それらはほぼ親の教育方針によるものだ。教育は親が子供に与えるギフトの一つであると私は思う。少子化や学生の高学歴化、景気の若干の回復もあり現在就職活動は売りて市場になりつつある、とはいえ、企業が求めるのは基準値を超える才ある若者だ。

履歴書審査の段階で、学歴によって優劣が決まってしまうのはいまだ同じである。そう、子供の将来を考えるがゆえに、何百万も事前投資をし、個人塾への通学を促し、できるだけよい学歴を与えようとする。それはまるで親の一種の義務であるかのようだ。

低所得者の教育環境が低所得のループを生む

ただ、ここで考えるべきはそのお金を捻出できない低所得の家庭である。今日日、全国小学生の通塾率は半数を超える。義務教育である小学校のクラス内で、通塾者とそうでないもので学力差がおきる。日本の高校のシステムは、偏差値でランク分けされるもので、それは大学受験に大きな差を生む。そう、良い大学をでて、良い職に就くには高校受験からしっかりと考えなければいけない。

そのために、各高校にあわせて傾向や対策を練って模擬試験を繰り返してくれる個人塾に通うことはかなり有利である。その通塾代を払えない低所得者の子供は受験において他に差をつけられ、就職活動が難航し、自分自身が低所得者になってしまう。これが、俗に言われる低所得のループである。

もちろん、勉学なんてものは個人の努力次第でなんとでもなるので、万人に当てはまるわけではないが、実際、低所得の親は子供への勉強や受験への意識が低いこともまた事実である。日本は一度勉強に躓くとそこから一気に他との差が生まれ、将来の不利益につながる。子供は若年から常にプレッシャーを感じ、時には受験の失敗が将来への悲嘆を生み、自殺を招くこともある。

一方オーストラリアでの教育制度とは

ここで、私の住むオーストラリアに焦点を当てて教育制度を考えてみる。オーストラリアでは5才から学校に慣れるためのプリスクール期間を経て、6歳でグレード1(日本の小学1年生にあたる)、そこから15歳のグレード10(高校1年生)までが義務教育で、グレード11,12に進むかどうかは本人次第である。

グレード1~12までが程同じ校舎か隣接した地域にあって、受験はグレード12の大学入学に向けた偏差値テスト(州統一テスト)までない。オーストラリアの私立校は、学力的な有利性よりもその宗教性を重視されたものでキリスト学校、カトリック学校など多民族の多いオーストラリアならではのものである。

なので、グレード12までは皆、のびのびと学校生活を送っている。学校進学は地域ごとに区切られているので、お金持ちや教育熱心な親の集うエリアは教育水準が高い傾向にあり、オーストラリアでは子供の教育のために住む地区を移動することがある。

とはいえ、39校あるオーストラリアの大学はほぼ公立で、私立は2校のみだ。また高校卒業以上の資格が合れば入学でき、オーストラリア各地に点在するオーストラリア州立の専門学校TAFEは受験はいらず、看護師やエンジニア、シェフなど多彩な職業への道が開かれる。TAFEに通う生徒の殆どは週3日学校、残りは仕事などをワークバランスがとれていて、ほとんどが自活している。

オーストラリアの最低賃金は18.93豪ドル

注目すべきはオーストラリアの最低賃金にある。オーストラリアの国の定める最低賃金は18.93ドルで現在の日本円のレートで約1,500円だ。また、休日にはペナルティレートとして1,5倍から2倍の時給がつき、世界で一番高い賃金で知られる。日本でいう高卒のアルバイトでも、十分に家族を持ち、養い、家を購入できる給料である。

オーストラリアの学校でのアジア人とは

オーストラリアの学校は4期制で4月、7月、9月に2週間ずつ、12月には1か月半のスクールホリデーがある。正直、アジア圏の私や友達からすると、子供が学校に行っていなさ過ぎて不安になるくらいだ。私からみてオーストラリアの子供たちは宇宙飛行士になりたい、医者になりたい等、明確な目標のない限りそこまで勉強に重きを置いていない。

むしろ、友達や家族と過ごし、のんびり心を育て、リラックスすることを大切にしているように思える。それに業を煮やし、家庭教育の充実を図っているのが日本人、韓国人、中国人、インド人等アジアで受験戦争が常であった私たち親世代である。

よく聞くのが、日本では成績がぱっとしなかった子供が、親の移住でオーストラリアの小学校に転入したとたんにクラスで1番できる子どもになったという話である。年度末にクラスの優秀者を表彰するのだが、そこには多くのアジア系の名前が並ぶ。アジア系両親の教育意識がオーストラリア人より高いというのももちろんあるが、それに加えて幼児教育の方針がその差を生んでいるのではないかと私は思っている。

オーストラリアの幼児教育は…

オーストラリアの幼児教育で大事とされるのは創造性を養える、遊びを中心とした学びである。個性が尊重され、何事もチャレンジする姿勢を良しとする。大して、日本の幼児教育はグループでの統一性や親や先生の指示に従えることを大事とする。小学校入学時点で、ある程度机に座って先生の話に耳を傾ける、ということができるのである。

当然移民反対の声が強くなる

オーストラリアには多くの移民が流入し、ビジネスを展開したが、そのほとんどがアジア系である。また、学歴や職歴の高いアジア人がオーストラリア人の仕事の枠を奪っていると移民反対を主張する政治家もいる。

正直にいうと筆者が自身の子供に望むのはオーストラリアの遊びの中で学び、想像力を身につけ、豊かな心を持ってくれることである。オーストラリアの少しゆっくりとした教育の中で、家庭で少し学力の手助けをし、将来の夢への選択肢を広げることができたら、と思う。

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